東京工芸大学 芸術学部フェスタ2020 電子図録

10 東京工芸大学 芸術学部 写真学科 コマーシャル写真専攻 現代美術家協会委員 私立大学情報教育協会委員 個展 作品展示 雑誌等への作品掲載多数 FESTA-02 作品 芸術学部フェスタ 2020 写真学科 酒井孝彦 SAKAI Takahiko 深淵 この作品は深い森を彷徨い途方に暮れると、ふと目の前に救 いの女神が現れたという場面を如何に自然に再現出来るかと いう実験的な作品である。人の記憶というものは本人でさ えも曖昧で、再現するとなるとそれこそ画像をいじる技術が あっても困難なものだ。ここでは、実際に私が森で彷徨った わけではないが、そう過程し、その記憶を作るという作業と いうことだ。 あくまで話の設定はファンタジーだが、それを具現化するこ とでどれだけその「瞬間」にリアルさを描けるかの実験であ る。女神と遭遇すれば後光がさしてさぞかし神々しい出会い だと思うだろうが、実際にはこんな場所に全く相応しくもな い格好の少女が当たり前の様に存在するということの不自然 さの方が実はリアルであったりするわけだ。 また作品の背景としてコロナ禍というものが、一過性ですぐ に終わると思いきや全くそうでなくて出口がなく、「アフター コロナ」と言いながら何が正解なのか誰もわからず日々を過 ごしてることにも影響されている。この混沌の中、誰もが終 わりたい気持ちがあるだろう。もし終わりがあるならそれは どんな終わり方なのだろうかと言うと、意外とこの様なもの なのかも知れないと言うことである。

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