東京工芸大学 芸術学部フェスタ2020 電子図録

8 芸術学部フェスタ 2020 物質は空間内で濃度の濃いところから薄いところへ拡散し、 最終的に均一になります。この状態では面白みに欠けますが、 2つの物質が反応しながら拡散するとき、物質の濃淡の波が でき、生物に見られる多種多様な模様が生成されます。これ はチューリングパターンとして知られていて、シマウマの縞 模様やヒョウの斑模様などがよい例です。反応と拡散のアル ゴリズムは、一定の割合で発生する物質 U と一定の割合で 消滅する物質 V があるとして、「2つの V と1つの U が反応 すると U が V に変化する」というシンプルなものです。こ の作品では、2つの物質が反応しながら、どのように空間に 拡散していくかを反応拡散方程式で表し、コンピュータで物 質の濃淡を模様として描画します。物質 U の発生率と物質 V の消滅率を微妙に変化させるだけで、現れる模様は大きく変 化します。また、濃度と色のマッピングが時間とともに変化 し、模様の色彩に多様性を生み出します。さらに、濃淡の波は、 鑑賞者に反応して、模様は刻々と変化します。ミクロなレベ ルでの反応と拡散の相互作用がマクロなレベルで予測不可能 な模様が生成される無限に広がる表現をお楽しみください。 インタラクティブメディア学科 久原泰雄 KUHARA Yasuo 反応と拡散 2001 年より東京工芸大学芸術学部にて教育研究に従事。専門はジェネラティブアート、スケーラブ ルアート。人工知能を応用した芸術表現を研究し、作品制作を行っている。代表的な作品として、 ディープラーニングにより著名な画家の作風を学習し、カメラ画像を画家の作風に描く AI アーティ スト絵画ミラー、実験的な写真制作手法を学習し、予測不可能な変異体の写真作品群を生成する AI Photographer Rainbow Mutations などがある。 FESTA-01 作品

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