研究

2024.9.13

知性とは?意識とは?自発的に動くロボット?人工生命の構築を目指して

工学部 工学科 工学系 機械コース
人工生命研究室 大海 悠太 准教授

教員プロフィール

おおがい?ゆうた
東京工業大学工学部制御システム工学科を卒業後、東京大学现在哪个app能买足彩総合文化研究科広域科学専攻に進学。東京大学特任研究員を経て、2011年4月に本学に着任。博士(学術)。専門分野は人工生命、複雑系、ロボティクス。これまでに関わった研究?開発は、認知モデルのシミュレーション、触覚システム、音楽ソフトウェア、ダンスロボット、メディアアート作品など。

ロボットに自発性を持たせるには?

 人間に命令されて動くのではなく、自ら考えて自発的に動くロボット、それを人工生命の一例と考えています。人工生命を構築するためには、人工知能をただ機械に搭載するだけでなく、環境との関わり方をシステム自身に獲得させることが重要です。これは、ロボットにある種の知性を持たせることを意味します。

 生命の特性や振る舞いをいかに再現できるか。それが人工生命研究の要です。しかし生命そのものをつくることは容易ではありませんので、対象を抽象的にモデル化し、構成論的アプローチを用いて、生命の理解やその応用を考えています。例えば最近は、人間の腕を模した構造物の振る舞いを元に、人間の身体はそれ自体が情報を持っているのではないかという研究論文をまとめました。

 こうした研究を世の中のニーズにどう落とし込むかを考えることはもちろん重要ですが、既存の枠にとらわれずに自由に研究を進めることが、研究者としての私のモチベーションです。人間の知性とは何なのか。意識はどこから生まれているのか。まずはそうした私自身の興味を追求し、人工生命の構築実現につなげていきたいと考えています。やりたい研究は尽きません。もっと時間がほしいですね。

過去の様々な経験が研究の糧になる

 私は、東京工業大学の制御システム工学科を卒業後、東京大学现在哪个app能买足彩総合文化研究科に進みました。取得した学位は博士(学術)になります。東京工芸大学には2011年から在籍しています。工と芸が融合した本学は、メディアアートの研究を行ったこともある私にとって、合っていると感じています。

 最近の趣味は、実益も兼ねてPCを自作することです。ただ、忙しくてあまり時間は持てていませんが。昔はバイクに乗っていたこともありますし、もっと遡れば野球もやっていました。人間の身体の動きに興味を持ったのはその頃かもしれません。AIとの最初の出会いはゲーム。小学生頃のことです。

 経歴も好きなことも一貫性がないように思われがちですが、これまでの様々な学びや経験が、今の私の研究につながっています。

雑食的に興味関心の幅を広げてほしい

 私の研究室では、常に最新の情報ツールを活用しています。なぜなら、これから社会に出て行く学生たちは、いずれ必ずAIに勝てなくなる瞬間に直面するからです。論文の指導も、オンラインで学生のPCにリモートアクセスしながら行っていますし、卒業論文を書くにはオーバースペックなくらいの情報ツールの使い方も教えています。これが正しいかどうかは分かりませんが、先進的なことに興味がある学生には刺激になると思っています。

 人工生命の研究に関心がある学生には、好奇心旺盛であってほしいと思っています。この先、この分野の研究をさらに進化させていくには、AIやロボットへの興味だけでは十分ではないからです。

 私もこれまでに、様々な分野の専門家の方々と共同研究を行いました。例えば、教育分野の方とは、スポーツ練習時の動作や発話を解析し協調学習に利用するWebシステムの研究を、音楽家の方とは、カオス理論※で音楽をつくるソフト開発を行いました。本学の芸術学部の先生と一緒にメディアアートの作品をつくったこともあります。分野を制限せず、興味や関心を持ったら行う。ブームが来る前に行う。これが私の研究スタイルです。これからも、できるだけ変わった研究をし続けたいと思っています。

 世界を見渡せば、色々な人が様々な研究を行っています。どんなことにも、たいてい面白いところがあるものです。これから世の中を牽引していく若者たちも、雑食的に様々な分野に興味や関心のベクトルを向けて、人工生命の構築実現につながる面白い研究をしてもらいたいと思っています。

※カオス理論=わずかな数的誤差により結果が予測不能になる現象を扱う理論。カオスとは、英語で混沌?無秩序を意味する。

※所属?職名等は取材時のものです。

機械コース

一人一台のロボットを作りその機能を高めていくことで多面的な能力を身につける

ものづくりの基礎となるメカ?回路?プログラミングを、ロボットという具体的なモノを通して学ぶことができます。個人やグループでロボットを制作する授業が毎年配置されており、年次に従って、課題となるロボットもレベルアップ。コンテスト形式で技術の習得を目指します。