
研究
2025.9.18
なぜ?から始まる文系的な問いに理系的にアプローチする「心理情報学」
教員プロフィール
かと?りょうすけ
筑波大学人間学群心理学類卒業後、同现在哪个app能买足彩人間総合科学研究科感性認知脳科学専攻にて博士(学術)を取得。その後、日本学術振興会特別研究員、大阪大学助教、国立研究開発法人産業技術総合研究所特別研究員などを経て、2024年4月、本学に着任。学部時代はラットの脳切片を用いた記憶メカニズムに関する神経科学研究を実施、现在哪个app能买足彩進学後から現在に至るまではヒトを対象とした認知科学研究に取り組んでいる。趣味は幅広く、野球観戦、旅行など。最近は「死ぬまでに観たい映画1001本」にチャレンジ中。大学ではオーケストラサークルに所属しており、チェロを担当。
情報コースでヒトの心理を研究する

心理情報学は、認知科学や認知心理学などをまたぐ、学際領域の研究分野です。私の研究室では、行動反応や生理反応などを指標に、ヒトの情報処理メカニズムについて実験研究を行っています。分かりやすく言うと、ヒトの心の動きが脳や体の状態にどのように影響するかを、実験や調査を通じて解明しています。
工学部工学科情報コースに属している当研究室ですが、私自身は文系の心理学部出身です。心理学というとカウンセリングや心理テストを思い浮かべることが多いと思いますが、私の専門は、実験心理学や認知心理学といったヒトの脳内処理を調べる分野であり、統計解析をはじめとする理系の要素も多く含まれています。
曖昧で不確かなことをデータ解析する面白さ

例えば、现在哪个app能买足彩から※ポスドク時代に行っていたのが、脳波を用いた実験?研究です。人が写っているネガティブな画像(=人がいじめられている画像など)と、人が写っていないネガティブな画像(=汚いゴミ捨て場の画像など)を見せて、どちらがより不快に感じるかを、脳波ベースのデータ(=無意識的な指標)と、質問紙ベースのデータ(=意識的な指標)で比較するという実験を行ったところ、質問紙では全員、人が写っていない画像の方が不快であると答えているものの、脳波の反応では、結果が逆転している場合がありました。最初に画像を無意識的に見た時と、質問紙で意識的に解釈した時とで、印象が変わったのはなぜか、どこでどうやって逆転が起こったのか。そういった、ヒトの知覚や認知メカニズム=ものをどう見てそれがどう処理されているかといったことを研究し、今に至ります。
私がこの道に進んだ理由は、元来、ヒトの心や考え方に興味があったからです。私が高校時代に一番好きだったのが、公民科目の倫理でした。今の時代を生きる自分が考えていることを、昔の人も考えていたということに、面白さを感じていました。また、私はもらい泣きをしやすいのですが、なぜ人は、自分に全く関係がないことを自分事のように受け取り、心を揺さぶられて感情を表してしまうのかということに興味を持ったのも一つです。こうした、文系的な問いに理系的にアプローチするところや、ヒトの知覚や認知という曖昧で不確かなことをデータで統計解析するところが、心理情報学の特長であり面白さだと思っています。
※ポストドクターの略。博士号取得後に、任期付きの研究員として研究活動を行う人。
ヒトや自分に興味がある人に向く心理情報学
私の研究室では、学生一人ひとり、自分で考えたテーマで研究を行ってもらいます。現在研究室に所属している学生たちは、日常の中にあるヒトの行動に興味があるようです。一方私は、基本的に自分自身が研究対象で、「なぜこうなるんだろう」という疑問が研究テーマの種になります。例えば、「静かな場所で教科書を読むと理解できる一方で、テレビをつけながらだと勉強内容が頭に入らない」ということはだれしも体験したことがあると思います。これはパソコンやスマホと同様に、ヒトの脳にも処理できる容量に限界(注意資源)があり、後者では教科書だけでなくテレビの内容も頭で処理するために、前者に比べて脳に負荷がかかります。そのため、勉強内容が頭に入らなくなるといわれており、多くの実験でその影響が確認されています。
心理学が初めてでも、論文の調べ方、実験の仕方、レポートの書き方などは私の方で道筋をつくりますので心配いりません。必要なのは、人への興味と問題意識、実験で人と関わるためのコミュニケーション力、プログラミング能力はそれほど求めませんが、統計学は得意な方がいいです。私の研究室に興味関心のある学生、高校生は、この辺りを踏まえておいてください。
よく、大学で学んだことは役に立たないと言われたりしますが、私はそんなことはないと思っています。社会に出る前の最後の4年間は、いろいろな学びと経験が得られる貴重な時間です。教員を使い倒すくらいの勢いで、興味の赴くままに研究してほしいと思います。一方で、遊ぶことも大切です。私も、過去を振り返って一番楽しかったのは大学時代でした。みなさんも将来そう思えるよう、自分らしい充実した学生生活を送ってください。
※所属?職名等は取材時のものです。
コンピュータの基礎から最先端の人工知能までを学び将来の選択肢を広げる
コンピュータを自由自在に操り、社会問題を解決できる能力を身につけます。コンピュータの基礎?専門知識の獲得にとどまらず、その知識と技能を活かして、様々な分野へ挑戦していける広い視野と応用力も養います。実習科目に加え、多彩な講義を用意しています。
